日本は災害が非常に多い国であり、台風や地震などさまざまな災害への対策を考えておく必要があります。BCP対策はこういった災害が発生した際に被害を最小限に留め、事業活動を速やかに復旧させるための体制を整えることを意味します。ここでは社会生活における重要なインフラの鉄道におけるBCP対策を紹介します。
強風や台風、大雨、大雪、地震などの自然災害の影響により、ダイヤが乱れることがあります。自然災害の影響で鉄道の運行に何らかのリスクがあると判断された場合、速度を落としたり線路の状態を確認したりする必要があるからです。
自然災害、人災、事故などの影響で停電が発生し、鉄道の正常運行に支障をきたすリスクがあります。
電車の正常運行を維持しているほとんどのシステムには、電気が使われています。鉄道自体への電力供給が維持されていたとしても、その他のシステムへの電力供給が停止すれば、鉄道は正常に運行することができません。
2004年3月、スペインで列車爆破テロが発生しました。2005年7月には、ロンドンの地下鉄等で同時爆破テロが発生しています。過去を振り返れば、日本でも鉄道を狙ったテロ事件またはテロに準じた事件は多々発生しています、
テロは鉄道会社における重要なリスク項目として、各社で多くの対策が取られています。
駅構内においては、駅係員やガードマンによる巡回警備、防犯カメラを通じたモニタリング、不審物・不審者の発見・通報に関する一般利用客への協力要請、中身の見える透明なゴミ箱の設置などをテロ対策として行っているところもあります。
また、列車内においては、ガードマンによる列車内の巡回警備、新幹線社内のゴミ箱の封鎖、運転室の施錠、不審物・不審者の発見・通報に関する一般利用客への協力要請、乗務員による不審手荷物のチェックなどがテロ対策として行われています。
例えば大雨の影響による防災・減災措置として、線路近くの斜面の緩みやすい箇所にのり面防護工事を施し、斜面崩落による断線などを防ぐ対策が望まれます。のり面防護工事が行われていない箇所でも、雨による斜面崩落や落石のリスクがある場所には、災害検知装置を設置して早期に危険の発生を把握する仕組みが必要でしょう。
また、強風の影響を受けやすい場所には防風柵を設けるなど、暴風リスクへの対策も必要となるでしょう。
かつての鉄道の運休は事故や車両故障、システムトラブルなどが原因でしたが、近年では台風や大雪などの自然災害の被害を抑えるため、あらかじめ運休を告知することがあります。これを計画運休と言います。乗客の安全確保が計画運休の第一目的です。
鉄道コンテナを利用した輸送を主流としていた事業者は、パレット化による積載の効率化と災害発生時を想定したBCP対策という課題を抱えていました。そこでトレーラーを活用したフェリー輸送へのモーダルシフトを解決策として検討しました。導入した結果、積載効率とBCP対策という2つの課題を同時に解決することができました。
参照:https://www.suzuyo.co.jp/transport/case/ferry02/
自然災害が発生した場合に船舶やトラックによる代行輸送を想定しているケースでは、会議を経てシステムに組み込まれるという流れによって1週間のタイムラグが発生するという課題がありました。そこで貨物駅をクロスドックとして活用するという対策により、輸送網のバックアップ体制を構築することができました。
参照:https://www.tajimituuun.co.jp/blog/archives/563
BCP対策に繋がる輸送サービス「BCP PACK」では、輸送に関するBCP対策として混雑する東京港を避けて名古屋や博多へ入港するソリューションを提供しています。鉄道や内航船を活用することにより、関東や東北エリアまで輸送を行えるため配達先まで輸入貨物を安定して供給することができるようになります。
参照:https://www.nittsu.co.jp/v-site/4.html
日本観光振興協会では交通事業者用のBCP作成ガイドを公開しています。これにはBCP計画における基本方針や災害・危機の想定、作成・運用体制などが織り込まれています。また、風や雨・雪・水などさまざまな災害が予想される場合の対応から発生直後の対応・危機後の対応までが記載されており、参考にしながらBCP計画を作成することができます。
参照:https://www.nihon-kankou.or.jp/home/userfiles/files/koutsu_tetsudo-guide2.pdf
自然災害の影響により鉄道にも甚大な被害が発生することも多々ある中で、国土交通省では自己の資力のみで速やかな復旧が困難な場合には鉄道軌道整備法に基づいて復旧費用の補助を行い速やかな復旧を促すことがあります。運休を余儀なくされるなど鉄道が止まった際には振替輸送という代替手段を講じられることもありますが、エリア単位での障害が発生した場合や被害が甚大な場合にはそれだけの対応・対策では補いきれないこともあります。そのため災害の規模や復旧後の事業を持続可能なものとするための事業構造の変更など一定の条件を満たす路線については国と地方で半分ずつ負担する形で補助を行い、被災鉄道の速やかな復旧を促進しています。
出典:https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r02/hakusho/r03/html/n2723c01.html