災害が発生したときに最も警戒すべきことは、工場や倉庫などの建物の倒壊です。二次被害の危険性も考慮しなくてはいけません。設備が故障する可能性もあります。建物の安全性が担保できない場合や機械・設備が故障してしまった場合は、生産ラインがストップすることになるでしょう。製造活動そのものがストップすることは、製造業における災害時の大きなリスクです。
商品の製造から消費者への供給までの一連のサプライチェーンが寸断されるリスクも考慮する必要があります。工場に被害がなくても、取引先が被災したり物流がストップしたりすれば、製造のための原材料・部品の調達ができなくなる恐れがあります。製造した商品を消費者へ供給するルートが断たれれば、消費者への販売が停止、商品を売ることができないため下請けへの依頼も激減するでしょう。このように連鎖的に業界全体が深刻な影響を受けることになりかねません。業績の悪化から事業縮小、間接的な倒産といったリスクが潜んでいるのが、災害の怖さです。
災害によって失うのは、建物や設備、サプライチェーンだけではありません。システムやデータを失う可能性があります。システムやデータの中には、事業の安定した継続のために必要不可欠なノウハウも含まれているでしょう。大事なデータが喪失すると、これまで通りの品質で製品を製造できなくなるかもしれません。災害リスクへの備えは、知的財産も考慮する必要があります。
以上のように、製造業においてBCPを策定できていないと最悪の場合、事業継続が危ぶまれるという事態に陥るかもしれません。
そうならないためにも、製造業界の企業の方は「災害情報システム」の導入を検討してみてはいかがでしょうか?
各地で発生した災害や事故に関する正確な情報をいち早く入手することで、現場での意思決定を円滑に進められるでしょう。
まずは、人命が第一です。緊急時は、従業員の安全を確保しましょう。事業の復旧や継続をスムーズに進めるためにも欠かせません。特に、安否確認は最優先事項です。
あらかじめ、安否確認の手法を決めておくことが大切です。私用の携帯電話にメールなどを送信する安否確認システムやSNSの活用、GPSなど位置確認ツールの利用などがあります。大規模災害が発生したときは、携帯電話はつながりにくくなることも考慮した上で、自社に合う安否確認方法を決め、周知してください。
災害が発生したときに、被害を最小限にとどめるためには、事前の防災対策が重要ポイントです。事業所や工場などは建物の耐震診断を受け必要な耐震措置をしたり、防災設備の導入をしたりといった対策をしておきましょう。
従業員が緊急事態発生時に安全に避難できるよう、定期的な避難訓練も大切です。従業員の安全を確保し、事業の早期復旧にもつながります。
製造業では、太陽光発電などの自家発電設備と蓄電システムの導入もおすすめです。電力供給がストップしても生産性を維持できます。
BCPで特に重要となるのは、優先業務の選定です。非常時に、どの事業を優先して継続するのかあらかじめ定めておきましょう。
災害が発生すると、業務可能な従業員数や部品、資金などが限られてしまいます。重要な業務を選定しておけばいざという時混乱しません。また、事前にバックアップシステムなどを用意しておけます。
優先する業務の決め方は、売上高や利益率を元に考える方法や取引先の優先度で決める方法、社会貢献性を重視する方法などです。
工場内の設備が破損してしまうことに備え、代わりに製造を継続できる設備を準備しておく必要があります。非常時のためだけに用意するのは難しい場合、保有している他の施設で代用可能か、検討してください。また、新たな設備を導入する際は、転用できるかを考慮するのもおすすめです。自社で代替設備を用意する他に、他社との協力体制を構築し、災害時に設備の一部を借り合えるようにしておくといいでしょう。そもそも設備を分散しておくことも有効です。
業務継続には、原材料も必要です。仕入れ先を分散することで、被災していない企業から仕入れができます。また、自社内で原材料の保管先を分散することも大切です。一カ所が被災したときでも、他の保管先から原材料の供給が継続できます。
納入先も幅広い地域に分散するよう意識したいです。エリアが集中している場合、災害で全ての取引先に納入できなくなる可能性があります。分散していれば、被災していない地域への納入で売上の減少を抑えられます。
災害時は、誰しも慌ててしまいます。しかし、早期の対応が被害を最小限に抑えるポイントとなるため、いざというときに迅速に対処できるよう、マニュアルを作成して備えておくことも対策の一つです。中小企業庁ではマニュアル作成の手順を紹介しています。
参照元:BCP策定のためのヒント|中小企業庁経営安定対策室( https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/guidebook/download/bcphint_all.pdf )
BCPを策定する場合、何のために策定するのか、そして運用する意味について検討し、基本方針を決めることが重要です。基本方針とは、BCPを策定するための目的でもあります。経営者は、スタッフの人命を守ること、供給責任を果たして顧客からの信用を守る、従業員の雇用や地域経済の活力を守るためなど、すでに基本方針として考えていることがあるはずです。そういった点を挙げて、方針を決めておくのが望ましいです。
企業にはさまざまなサービスや商品があります。災害が発生した際には、限られた人員や資機材の範囲で自社の事業を継続させていく必要があり、基本方針を実現しなければなりません。
そのため基本方針の立案後は、限られた人員や資機材の中で、優先的に製造・販売を行う商品やサービスを決めておく必要があります。自社の製品や商品の中で最も優先的に製造や販売しなければならない重要なものを1つ決めておきましょう。
企業は、地震などの災害や感染症などさまざまなものから影響を受けることが多く見られます。
このような災害によって、工場が生産停止になったり、店舗が壊れて商品の販売を行えなくなったりするケースがあるのです。そのため、平常時から災害などによって会社が受ける影響についてイメージを持っておくことが重要です。
例えば、ライフラインへの影響が生じると、停電して水道やガスが停止する可能性があります。道路の一部が通行規制となる可能性があったり、電話やインターネットなどがつながらなくなったりするリスクもあります。
会社へも影響がおよぶ可能性があるため注意が必要です。従業員やその家族が負傷したり交通機関が停止したりすることによって、一部の従業員が出社できなくなる可能性があります。店舗が、浸水や倒壊するリスクがある点も考慮しておかなければなりません。
さまざまな状況の中にあっても、会社は商品を提供し続けなければなりません。商品を提供し続けるためには、製造や販売を行うスタッフや機械設備など、さまざまな経営資源が必要です。そのためには、平常時から緊急時に経営資源を確保するための対策を検討しておく必要があります。
事前に検討しておく対策について具体例を挙げると、金融機関と友好な関係を築くこと、顧客管理簿の整理が不十分など、日頃から感じている自社の強み・弱みを踏まえた上で検討することが重要です。
その他には、自社の被害状況により、現地での復旧が困難な場合や、通常の調達先からの商品・部品等の調達が難しくなってしまう場合があることも考慮しておく必要があります。
このような事態に陥ってしまった場合、平常時とは異なる工場で商品を生産したり、いつもと違う調達先から商品・部品の調達をしたりする、代替方法が有効な手段です。事前対策の一つとして代替方法についても、あらかじめ検討しておくことが重要でしょう。
ちなみに、事前対策は安否確認システムの導入や耐震補強の実施など、資金が必要なものだけではありません。複数業務の対応ができるスタッフの育成など、資金を必要としない対策も大切です。
以上のことから、資金が必要な事前対策は自社で対応できる範囲とし、まずは資金が不要な対策をメインに検討しましょう。
実際に災害が発生した場合、会社が事業を継続していくため、適切な行動をとれるよう緊急時の対応とその責任者について検討しておきましょう。
緊急時の対応は、初動対応や復旧のための活動など、さまざまあります。そのような対応に関する重要な意思決定および指揮命令を行う統括責任者を取り決めておかなければなりません。
また、統括責任者が不在時の対応や被災するケースもありますので、代理責任者を選んでおく必要があります。代理責任者は、2名決めておくと安心です。
緊急時の対応では、他の企業と連携しながら対応すると効果的にすすめられるケースがあります。また、緊急時における統括責任者の行動をチェックできるようチェックリストを作成しておくのも良いでしょう。
包装資材や緩衝材の製造を手掛ける株式会社生出。BCPの策定に着手したきっかけは、2009年に大流行したインフルエンザパンデミックでした。結果的には短期間で収束したものの、社員の大半が出勤できなくなれば業務が停止するというリスクを強く意識するきっかけになりました。得意先には、人工透析液を製造している製薬会社があります。災害時に製薬会社に対して資材を提供できなくなれば、命に関わりかねません。取引先からの要請もあり、パンデミック時の事業継続体制の構築に取り組むことになりました。
工場の立地的に立川断層が近いことから、まずは地震による被災シナリオを想定。施設内の危険個所の把握、商品や資機材の転倒・落下防止、サーバー・OA機器の固定、ガラス類の飛散防止、備蓄などの防災対策に加えて、代替生産できる事業継続体制まで整えました。
BCP策定は、社外へのアピールにも有効です。仮に被災しても代替生産により製品を確実に届けられるという取り組みによって、販売先からの信頼が大幅に高まり、ビジネスチャンスにつながりました。
参照元:中小企業庁│BCP等の取組事例集( https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/2018/180420BCPshiryo2.pdf)
地域密着ガス・サプライヤーである北良株式会社は、岩手県北上市の企業です。東日本大震災の経験を経て、災害対応の大切さを実感していることから、社員が一丸となって災害対応スキルを磨いています。医療用の酸素供給装置の提供もしているため、災害時の対応は迅速に、緊急度を適切に判断して行わなければいけません。社員と家族を守ることはもちろん、地域の人の命を守ることを使命と考え、災害対策に取り組んでいます。
北良株式会社では、BCP文書の作成は行っていません。大規模な訓練や研修を実施するのではなく、日々の取り組みの中で、コツコツと災害対応のスキルアップを行っています。管理職も含めた全社員が朝礼後に10問のクイズを解くのが日課。この中には必ず、災害対応に関する問題を含めています。また、曜日を決めて電話対応のロールプレイングも実施。災害発生時を想定したシナリオを元に、緊急要請時の対応を落とし込みます。ポータブル非常用発電機やAED、通信設備類の扱い方もチェックしています。
参照元:中小企業庁│BCP等の取組事例集( https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/2018/180420BCPshiryo2.pdf)
災害対策の初動に差をつけると注目をあつめているのが、企業向けの災害情報システムです。各地で起こっている災害や事故情報を報道より先に受け取ることで、「現場で今、なにが起こってるのか」「次にすべきことはなにか」を把握できるため、防災はもちろん、事業継続(BCP)対策の観点から注目を集めています。
製造業の皆様、日々の生産活動において、万一の事態が発生した際の対策は万全ですか?BCP(事業継続計画)は、予期せぬ事態から事業を守り、持続可能な生産体制を維持する上で欠かせません。しかし、BCP対策だけでは不十分な場合もあります。そんな時、生産管理システムが大きな助けとなることがあります。
生産管理システムを導入することで、リアルタイムでの生産状況の把握、資材の在庫管理、品質管理など、生産活動全般にわたる管理が効率的になります。これにより、BCP対策と併せて、より強固な事業継続体制を築くことが可能です。
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