様々な事業を展開し、豊富な商品を取り扱う商社ならではのリスクが考えられます。国内だけでなく海外に拠点が複数ある場合、災害に関するリスクが広範囲に及びます。
地震や津波、豪雨や土砂など災害リスクが高い地域に拠点がある場合は、さらにリスクが高まるでしょう。従業員が被災し、ケガなどすれば業務継続が難しい事態が発生します。
火災などの2次災害で電源が断たれると、普段運用しているシステムや通信手段が使えず、業務継続や外部との連絡が取れなくなる事態も想定できます。
例えば、自動車部品を調達して、自動車会社へ納品している場合や、完成車を仕入れて販売している場合、どこかが被災すれば取引がストップしてしまう危険があります。部品の調達先が海外で、大きな災害が発生して連絡が取れなくなるということも考えられます。
被災して製造できなくなり、メーカーからの供給が止まると、国内だけでなく世界中の市場に影響を及ぼす事態になるかもしれません。特定分野の細かいニーズに応えている専門商社では、業界そのものに深刻なダメージを与える可能性があります。
以上のように、商社においてBCPを策定できていないと最悪の場合、事業継続が危ぶまれるという事態に陥るかもしれません。
そうならないためにも、商社にお勤めの方は「災害情報システム」の導入を検討してみてはいかがでしょうか?
各地で発生した災害や事故に関する正確な情報をいち早く入手することで、現場での意思決定を円滑に進められるでしょう。
災害発生時に、従業員の安否確認を速やかに行える方法を決めておく必要があります。商社はITスキルが高い傾向があるため、安否確認システムを導入しやすい土壌があるでしょう。自社にとって使いやすいシステムを用意して、定期的にシステムが稼働しているかのテストを実施しておきます。
各部署やチームでの連絡網や連絡手段も事前に用意しておきましょう。大規模災害時は、携帯電話が使えないことも多いため、複数の連絡手段を用意しておけば安心です。
現場の情報をいち早くつかむことがとても大切です。安否情報はもちろん、被害状況も迅速に収集できるようにしておきましょう。初動対応のスピードもアップして、リスクを低減できます。
商社は、配送センターを持っていることも多く、物流との密接な関係があることも特徴です。物流状況も把握することで、事業再開の判断もしやすくなります。物流部門への連絡手段やフローも準備しておきましょう。また、他の関係部門へも連携がスムーズにできるようシミュレーションしておくことが大切です。
事業継続のために必要なのがデータです。あらゆる情報がデジタル化されているため、データをバックアップすることで、災害時に他の拠点での事業継続にも役立ちます。データのバックアップをするときの注意点は、一カ所だけに保存しないことです。遠隔地にも定期的に保管する体制を整えてください。被災した場所以外のところでデータを取り出し、事業継続が可能です。
データと共に、システムのバックアップもしましょう。業務システムはクラウド化がおすすめです。パソコンにソフトウェアをインストールする形では、社屋の倒壊などでシステムを使えなくなってしまうリスクがあります。
商社では、受発注などの業務がおこなわれます。こうした業務を遂行するためには、電力の確保が必要不可欠です。パソコンやインターネットの利用には、電力が必要。太陽光発電と蓄電池などで備えるのもいいでしょう。無停電電源装置も停電後しばらく電力が確保できます。
災害発生時は、多数の商品を取り扱っている商社に、様々な企業から緊急で物資の要請を受けることがあります。できるだけ要請に応えられるよう、仕入れ先とのコミュニケーションを取る人員や連絡体制を整えておきましょう。
取引先との協力体制も大切です。製造業があれば、出荷を止めないよう複数の物流ルートや生産するための人員を確保する必要があります。生産拠点が複数ある場合は、どこかが使えないときに別の拠点で稼働できるかどうか検証しておきましょう。
割りばしを海外から輸入し、封入や名入れなどの包装加工をして全国に出荷している会社が地震の被害を受けました。震度6弱の地震でしたが、さいわい人的被害や建物、設備への被害はありません。
しかし、倉庫では商品在庫が荷崩れしたため、週末に従業員総出の復旧作業を行いました。災害に対する従業員の意識が高く、落ち着いて適切な行動ができました。
年2回の防災訓練によって、従業員の意識向上に努めてきたことが功を奏したと実感しています。東日本大震災でBCPを策定していた企業が早期に事業再開できたことを知り、自社にもぜひ必要だと思い、1年かけてBCPを作成していたことが活かされています。
個人情報であるメールアドレスを収集し、会社で管理するのは望ましくないという考えと、メールが届かない社員がいる状態で、安否確認に利用するには大きな不安がありました。
個人情報は管理者でも見ることができない災害情報システムがあることを知り、導入。従業員全員にメールが届き、回答も素早く確認でき、問題なく使えています。ホームページに詳細なマニュアルがあり便利なので、1部ずつ各家に常備するよう指示。ボリュームがあったので、自社で簡易版を作成しました。
説明会で使い方を周知し、家族メッセージも普段から使って慣れておくよう従業員にお願いしています。もちろん家族間のメッセージは会社も管理者も見ることはできません。訓練を行うことで、かなり浸透し防災意識の向上も感じられます。
災害対策の初動に差をつけると注目をあつめているのが、企業向けの災害情報システムです。各地で起こっている災害や事故情報を報道より先に受け取ることで、「現場で今、なにが起こってるのか」「次にすべきことはなにか」を把握できるため、防災はもちろん、事業継続(BCP)対策の観点から注目を集めています。